第二次世界大戦前から戦後にかけて、フランスでは「文学とは何か」という問いがさかんに論じられました。ヴァレリー『詩学講義』(1937-1945)、サルトル『文学とは何か』(1948)、バルト『エクリチュールのゼロ度』(1953)、ブランショ『文学空間』(1955)など、その例は枚挙にいとまありません。注目すべきことは、これが何より戦争の時代であり、文学をめぐる問いが、過酷な現実とどのように向きあうのかという問いと切りはなすことができないということです。より広く、二十世紀全体を通して、どのようにして社会に語りかけることができるのかを、作家たちは模索してきました。文学の価値が凋落し、力を失ってゆくこの時代、文学と社会、文学と現実との関係がどのようなものと考えられたのか、いくつかの視点から考察していきます。
プログラム
13:00 趣旨説明
第I部 革命と文学、戦争と文学
司会:塚本昌則
13:10 鈴木雅雄「文学として信じる/文学なのに信じる──シュルレアリスムと秘密結社の想像力──」
13:50 永井敦子「革命作家芸術家協会離脱者の<モラリスムなきモラル>──ピエール・カミナードの『イマージュとメタファー』(1970) を中心に──」
14:30 澤田直「サルトル『文学とは何か』再読──戦争が文学に突きつけるもの」
15:10 質疑応答
15:30 休憩
第II部 作家は何を語っているのか? 作家とは誰か?
司会:鈴木雅雄
16:00 塚本昌則「〈文学とは何か?〉──ヴァレリー・ブランショ・バルトにおける間接言語の探究」
16:40 塩塚秀一郎「文学とコンセプチュアル・アートの境界:作家とは誰か? 書物とは何か?」
17:20 質疑応答・全体討議
18:00 閉会
講師プロフィール
鈴木雅雄
早稲田大学教授。著書に『シュルレアリスム、あるいは痙攣する複数性』(平凡社、2007年)、『火星人にさよなら──異星人表象のアルケオロジー』(水声社、2022年)等。訳書にバンジャマン・ペレ『サン=ジェルマン大通り百二十五番地で』(風濤社、2013年)、ジョルジュ・セバッグ『崇高点──ブルトン、ランボー、カプラン』(水声社、2016年)等。
永井敦子
上智大学教授。著書に『クロード・カーン──鏡のなかのあなた』(水声社、2010年)、『ジュール・モヌロ』(水声社、2019年)、『アンドレ・マルローと現代──ポストヒューマニズム時代における〈希望〉と再生』(共編、上智大学出版、2021年)等。訳書にジュリアン・グラック『ひとつの街のかたち』(書津心水、2004年)、『街道手帳』(風濤社、2014年)等。
澤田直
立教大学名誉教授。著書に『サルトルのプリズム』(法政大学出版局、2019年)、『フェルナンド・ペソア伝──異名者たちの迷路』(集英社、2023年、読売文学賞(評論・伝記賞))等。訳書にフィリップ・フォレスト『さりながら』(白水社、2008年)、ジャン=ポール・サルトル『イマジネール』(共訳、講談社、2023年)等。
塩塚秀一郎
東京大学教授。著書に『ジョルジュ・ペレック──制約と実存』(中央公論新社、2017年)、『逸脱のフランス文学史──ウリポのプリズムから世界を見る』(書津侃侃房、2024年)等。訳書にジョルジュ・ペレック『煙滅』(水声社、2010年)、リュト・ジルベルマン『パリ十区サン=モール通り二〇九番地──ある集合住宅の自伝』(作品社、2024年)等。
塚本昌則
東京大学名誉教授。著書に、『目覚めたまま見る夢──20世紀フランス文学序説』(岩波書店、2019年)、『写真文学論──見えるものと見えないもの』(東京大学出版会、2024年)等。訳書にポール・ヴァレリー『ドガ ダンス デッサン』(岩波文庫、2021年)、エドゥアール・グリッサン『カリブ海序説』(共訳、インスクリプト、2024年)等。

