フランス側

 ナタン・ベリド

『日本の最高裁判所における司法権の行使 : 日本における法の支配を考える』

Presses universitaires de la Méditerranée、2024

フランス国立東洋言語文化学院(イナルコ)にて日本語を専攻後、京都大学に1年間交換留学。帰国後、パリ第1大学(パンテオン・ソルボンヌ)にて法学研究を開始し、2020年に日本の最高裁判所を主題とするイナルコの博士号、2022年にパリ第1大学において私法学の博士号を取得。イナルコにて日本語教育に従事し、現在はパリ第1大学にて私法を担当。

受賞者の言葉

 この度、渋沢・クローデル賞という、日本とフランスの知的交流を象徴する栄えある賞を賜り、身に余る光栄に存じます。本賞は私一人に与えられたものではありますが、その背後には、長い年月にわたり支えてくださった多くの方々の存在があります。先生方、仲間や友人、読者の皆様、そして常に見守ってくれた家族に、ここに心より御礼申し上げます。とりわけ、生前、温かく励まし導いてくださったジャン=フランソワ・サブレ氏に深く思いを致します。突然の、あまりにも残酷な別れは今なお胸に痛みと大きな空白を残していますが、この受賞は、何よりもまず氏の思い出に捧げるものであります。
 本著『日本の最高裁判所における司法権の行使』は、第二次世界大戦後に制定された日本国憲法の下で期待された司法の役割と、その現実の歩みとのあいだに生じた距離を検討し、日本の最高裁判所がいかなる自己理解のもとで権限を行使してきたのかを、歴史・判例・学説を通じて考察した試みです。日本の司法制度は、しばしば「消極主義的」であると評されてきましたが、その評価の背後にある法思想や国家観を丁寧に読み解こうとした点に、本書のささやかな貢献があると考えております。今回の受賞が、日本法という豊かな研究対象に新たな関心を喚起するきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。
 フランスと日本には、多くの共通点があります。美食の文化、豊かな文学の伝統といった親和性はよく語られますが、両国には、成文法を基礎とする法制度と、人間と社会を見つめ続けてきた独自の法文化という、あまり語られないが重要な共有財産もあります。両国の法は互いに学び合い、比較を通じて自らを照らし返す可能性を秘めており、その対話は今後さらに深まっていくべきものだと感じております。
 今後は、日本滞在中の新たな調査・資料収集にも力を注ぎつつ、日本法に関する研究を一層発展させ、その成果をフランス語圏に紹介していきたいと存じます。渋沢・クローデル賞という大きな励ましを胸に、微力ながら、両国間の知的交流と相互理解に貢献しうる研究を続けていく所存です。